大きな河を隔てて二つの民族が争っている。
その河で死ぬと屍体はすぐに人の形を留めなくなり
ぐずぐずとした形となって体内のガスで浮上し
ゆっくりと下流に向かって流れていく。
私は対岸の人間だが、なぜか逆側の岸に仲間と思われる二人と
共に漂い対岸からの攻撃に備えている。
我々の片方の手の甲には束になった蜘蛛の糸状のものがくっついており
その反対側の先は対岸にまでのびている。
自分は向こう岸から逃げてきたのか?
最初は誰か(向こう岸?こちらの岸?)と戦争のように
戦っているのだと思っていたのだが。
仲間の一人が突然、まるで釣られた魚のようにその糸状のものに
引っ張られて対岸に飛んでいった。
私はレーザーのようなもので銃撃されたがその当たった先が
ちょうど手元の糸の根っこのような部分で
糸のようなものは手の甲に少し残ったが
私自身は完全に切り離されて自由になった。
もう一人は運悪く被弾し瞬時に肉の塊になって
その河を着衣と共にゆっくりと流れ始めた。
自分は岸に上がり対岸に人間とばれないようにビビりながら
こちら側の岸の水際にある三軒続きの長屋のようなところの
中央の家、その部屋のドアが開いていたので中に入る。
その家の住人に事情を話すと安心するように言われ
家のまわりを案内される。
大きな河を瀬にして建物の左側には大河に流れ込む小さな川が流れている。
建物の大きな河とは逆側に舗装されていない道路があり
小さい川の反対側には暗くてよく見えないが
商店街だか繁華街だかの灯りが見える。
なんだか昭和30-40年代の頃の闇のようにも思える。
私は長屋がこんな川岸に建っていて良く攻撃にあわないな、
と、不審かつ不安に思っている。
対岸の人間だとばれると大変、
もちろんこちら側の人間にばれても危険だから
あそこの光っている看板の建物の上階にある
中華系の店に行くと良いとアドバイスされる。
建物があるであろう繁華街のある場所は遠く霞んでいて、
そして光っている看板が幾つもあるものだから
自分はどこにその店があるのか分からないまま道に立っていた。
なぜだか通りで買い物かごを抱えた自分の母親を見た気がした。