912

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ゲンジツ

晩酌はラムを焼いてタマネギ、トマトを添えたもの。茄子の南蛮漬。鰹のヅケ。

缶チューハイ2本。ネプモイハイボール

かりんとうを食べてしまったのが余計だった。

 

ユメ

引越しをすることになった。

物件はネットで決めた。広めの間取り。

着いた所は古い集合住宅。10階らしい。

現地にたどり着くと近所のスーパーにつながるアスファルトが敷き詰められた路上では黄色いテントがいくつかあって学生アルバイトと思しき人たちが50円でペットボトルに入った食用油や缶詰を売っている。別の商品の勧誘のような気がしてその場を去る。

船についているような狭くて急な階段、そのうえ階と階の境が入り組んでいていつひとつ上の階に上がったのかわからない。

階が変わるごとにめまいがする。

気がつくと開けた最上階にいた。

部屋の場所がわからずポケットを探り封筒を取り出す。

中から鍵が出てくる。入っていた手紙には912号室の文字。

一緒にフェルトのように毛羽立った不織布のような紙でできた学生組合の勧誘文も入っていた。

入り組んだフロアで部屋を探す。

頭の中で毎日あの入り組んだ階段を使うのかと思うと辟易する。

第一大量の引越し荷物をどうやって運ぶのか悩んでいるとそのフロアには車が乗り入れているので車で荷物を運び入れればいいのだと合点がいく。

あちこちに白いペイントで番号が書かれているが912が見つからない。

近い番号があるのでこのフロアで間違いはないようだ。

開けた道路の先に古い建物が見える。あそこだとしんどいなと思う。

行ってみると古い倉庫街のような空間で佳境と思しき人とストリートスポーツを楽しむ南米から来た人たちの姿もある。番号を辿ってみるが912号室は見当たらない。

こんな古い空間に部屋があっても困る。

一角に油で汚れた一列にならぶロッカーのようなものを見つけた。

そのひとつに912の番号を見つけた。悪い予感。

既に黄色いグリースのようなものがこびりついた鍵がついている。

ロッカーを開けると縦に押し込まれた便器が入っている。

これが借りた部屋?

一度ロッカーの扉を閉める。

思いついて付いていた鍵を抜いて持っていた鍵と見比べる。

多分同じ鍵。

持っていた鍵を差し込む。

その鍵も自分の指も黄色い油でギトギトになってしまい気持ちが悪い。

鍵は鍵穴にはまった。がっかり。

内見もせずネットで物件を決めた自分が悪い。

それにしてもこれは部屋じゃない。詐欺じゃないか。

……思いついて黒い蓋のついた便器を引き抜く。

実際に触れてみるとおもちゃのように小さい。

その奥にはブレーカーのスイッチがあった。

なんだ別に部屋はあるんじゃないかと安堵するもこの場所ではなんの期待もできない。

そもそもブレーカーボックスに汚れた便器を入れたまま部屋を貸す業者も信用がおけない。

手についた黄色いグリースが気持ち悪いがそれでも部屋を探すことにする。

なぜかモギ君ともうひとり顔が見えない友人も合流して部屋を探す。

ひどいめに遭いましたねと言いながら足取りは軽い友人達。

910と壁に書かれた場所を見つけるが扉もない物置のような広さの埃だらけの空間。

自分の部屋もこんな場所かよと思ったら急激に疲れてきた。

嫌な汗が頭部から流れはじめた。

ちゃんとした服を着ていたつもりなのに何日も着替えていない嫌な汗の匂いのする黄ばんで工業油で黒く変色したランニングを着ていた。

手についた黄色いグリースが気持ち悪い。

だんだん調子が悪くなってきた。

 

 

ゲンジツ

びっしょり汗をかいている。

右手人差し指の第二関節が腫れていて痒い。

水を飲んだらお腹を壊した。

すこぶる体調が悪い。

きっと晩酌のせい。

水シャワーを浴びて先週処方された蕁麻疹の薬を飲む。

スポーツドリンクを飲んだら回復した気がするが胃が痛い。

考えたら先週から胃痛が続いていたことを思いだした。

さっきまで自分がいた寝室だけが異常に暑い。

それでも布団に横になる。

外が白んできた。

メガネを介さず見る外の風景はぼんやりとしたモノクロームの世界。

遠景も近景も。

 

 

暗示的な数字。

体調不良が続きすぎる。

右目の不調も思い出した。